ランニングピッチの基本から理想値、身長との関係、上げ方のテクニックまでをわかりやすく解説。
ストライドとのバランスやピッチの計算方法も紹介し、初心者から中上級者まで役立つ内容です。
ランニングピッチを見直して効率的な走りを目指しましょう。
■本記事のポイント
- ランニングピッチの意味と測定方法
- 平均的なピッチ数値と理想的な範囲
- 身長や走力に応じたピッチの考え方
- ピッチの上げ方とストライドとの調整法
ランニングピッチを理解する基礎
ランニングフォームや走行効率を高めたいと考えているなら、「ランニングピッチ」の理解は欠かせません。
走る際にどれだけ足を速く回転させているかを示すこの指標は、単なるスピードの話ではなく、ケガの予防やパフォーマンスの向上にも大きく関係しています。
ここでは、そもそもランニングピッチとは何か、平均的な数値はどの程度なのか、そして身長との関係性や理想値についても詳しく解説します。
これを知ることで、あなたの走りが一段と進化するはずです。
ランニングピッチとは何かの解説
ランニングピッチとは、1分間に両足が地面に接地する回数のことを指します(ステップ周波数とも呼ばれます)。
たとえば、左足が30秒間に40回接地した場合、それを2倍にして80回、さらに両足分で160ステップ/分(SPM)となります。
つまり、ランニングピッチは「足の回転の速さ」を示す数値であり、走る際の地面との接触頻度を表す重要な指標です。
なぜこれが重要なのでしょうか。
一方で、ピッチが速いほど一歩あたりの滞空時間が短くなり、地面への衝撃が減少します 。
これにより、前に飛び出しすぎる「オーバーストライド」(過度の足の前出し)が抑えられ、膝や股関節への負担軽減につながると考えられています。
また、ランニングピッチは単に速く走るためだけの指標ではありません。
初心者ランナーはストライドが長くピッチが低い傾向があり、その結果としてヒールストライク(踵着地)になりやすく、それが故障の一因になる可能性があります 。
実際、ピッチを10%上げることで膝や股関節への衝撃が減少し、故障リスクも軽減されるという研究結果もあります。
まとめると、ランニングピッチは走る速さを左右する「回転数」かつ、ランニング効率や怪我予防にも大きく関連する重要な指標であり、練習やフォーム改善の際に注目すべき数値です。
平均ランニングピッチの目安(160から200)
ランニングピッチの“目安”として、一般的な市民ランナーは160~200SPMの範囲で走ることが多く、中でも170~180SPMが理想的とされています。
具体的には、初心者やゆったりペースのランナーは150~170SPM、中~上級者は180SPM前後を目指すのが現実的です 。
過去にはオリンピック選手の観察を通じて“180SPM”が魔法の数字のように伝わりましたが、そもそもその数値は高速レース時のエリート選手に基づくものです 。
したがって、すべてのランナーが180SPMを目指すのではなく、あくまで「速すぎず、遅すぎない、個人に合った最適範囲」を意識することが肝心です。
さらに、ペースによってピッチは変動します。
ゆっくりジョグでは160から165SPM、テンポ走では170SPM、レースやインターバルなどでは180SPMに達することもあります。
身長が高いランナーはやや低めのピッチでも効率的な走りになる傾向があり、誰もが一律の数値を目指すのは適切でない場合もあります 。
したがって、160~200SPMという幅を頭に入れつつ、自分のペースや体格に応じて170~180SPMを目安とし、普段のランニングペースを基準に調整していくことが現実的かつ効果的です。
身長との関係性
ランニングピッチは身長によって自然に変わる傾向があります。
身長が高い人は脚が長いため、一歩の歩幅(ストライド)が長くなりやすく、その分ステップ数は少なくなるためです 。
一方で、背が低い人は脚が短く、ピッチが速くなる傾向があります 。
たとえば、1.87からmの身長の人と1.65からmの人を比較すると、理論的にはピッチが約20SPMほど異なる場合があります。
これは「から123.1からSPM/m」の関係性に基づく数値であり、自然なフォームにおいて無理に同一ピッチを目指すのは効率的でないことを示しています。
ただし、身長に応じてピッチを調整するのはあくまで目安です。
実際に短すぎるピッチは「オーバーストライド」につながりやすく、膝や股関節への負担増加を招く恐れがあります 。
したがって、自分の身長に合わせたピッチを把握し、過度に低すぎたり高すぎたりしない範囲で調整することが、理想的な走りにつながります。
ランニングピッチの理想値とは
ランニングピッチの理想値は個人差があるものの、一般的には「170から180からSPM」が効率的とされています。
これはエリートランナーに限らず、市民ランナーにも実用的な目安で、膝への衝撃が軽減され、走行効率も向上しやすいためです 。
とはいえ、すべてのランナーに170から180からSPMが最適というわけではありません。
身長・脚の長さ・ランニング歴などにより、最適なピッチは個別に異なります 。
たとえば、エリウド・キプチョゲ(世界記録保持者)はレース中に190から200からSPMで走ることもありますが、これは彼のスキルと筋力の賜物です。
また、ペースによって理想ピッチは変化します。
ゆっくり走るジョグでは160から170からSPMが自然で、ペース走やインターバルでは175から180からSPMに上がることもあります 。
長時間・距離を走る場合には、無理に高ピッチを維持しようとすると、フォームが崩れたり疲労しやすくなったりする点にも注意が必要です。
したがって、自分のペースや体格、走る目的に応じて「170から180からSPMを理想として練習しつつ、自身に合った最適ピッチを見つける」ことが大切です。
ランニングピッチを高める方法と効果
ランニングピッチを高めることで、走りの効率やスピード、さらにはケガのリスク軽減にもつながることが分かっています。
しかし、「どうやって上げればいいのか」「ストライドとの関係は?」「実際にどう練習するのか」といった疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
ここでは、ピッチを無理なく高めるための具体的なテクニックや、ストライドとの理想的なバランス、そして練習で使える便利な計算方法やリズム感覚の身につけ方について詳しく解説していきます。
ランニングピッチ上げ方の基本テクニック
ランニングピッチを高めるには、リズム感と筋力の両面からアプローチすることが効果的です。
まず、メトロノームアプリを使って180から185SPMに設定し、そのテンポに足を合わせて走る練習を取り入れます。
このドリルを行うことで、無意識にピッチを引き上げる感覚が身につきます。
もう一つ重要なのは、脚をお尻に引き寄せて回転させる意識を持つことです。
具体的には、地面から離れた瞬間に膝を座骨へスッと引き上げ、ピッチを増やす意識で「ポンポン」と軽く走る練習を行います。
こうすることで、脚の回転が速くなり、上下動を抑えた効率的な走りが可能になります。
さらに、腸腰筋や股関節まわりを鍛える筋トレにも取り組んでください。
例えば、ミニバンドやヒップフレクションマシンを使ったトレーニングを週1から2回行うことで、ピッチアップ時の脚の引き上げ力と持久力が強化されます。
これらを組み合わせることで、速く・楽に・安定したピッチ走法が習得しやすくなります。
ストライドとのバランス調整方法
ピッチを高めるだけではスピードアップにはつながりません。
ピッチとストライドのバランスを整え、両者を最適化する必要があります。
そもそもスピードは「ピッチ×ストライド」で決まるため、この両輪がうまくかみ合わなければ効率的なランニングにはなりません。
たとえば、メトロノーム練習でピッチを上げる一方、ストライドが縮まりすぎて推進力が落ちればペースが下がります。
そこで、ピッチに合わせつつストライドを自然に維持するリズムを意識しながら、足裏で地面を押し返す「反発感」を捉える練習を加えると有効です。
また、上り坂ではピッチを上げて、下り坂や平坦時にはストライドでペースを調整するなど、地形に応じた履き分けを練習しましょう。
これを繰り返すうちに、自然に場面に応じたバランス調整が身につき、どんな条件下でも安定したスピードが出せるようになります。
メトロノームで160・180・200に慣れる
ランニングピッチを一定に保つにはメトロノームが非常に有効です。
たとえば、160・180・200からSPMに設定したメトロノーム音と足音を同期させることで、一定のリズム感が身につきます。
ただし、最初から目標値に無理に合わせるとフォームが乱れてしまうため、現在のピッチに合わせて徐々にアップさせるのが望ましいです。
スマホのメトロノームアプリや音楽プレイリスト(BPM付き)を使えば、ビートに合わせて自然に脚が動きやすくなります 。
具体的には、まず低め(160SPM)から始めてフォームが安定するまで繰り返し、その後10SPM程度ずつ上げて180、さらに余裕があれば200からSPMにも挑戦してみましょう。
オンラインでは、トラック練や坂道練習と組み合わせる方法がおすすめという声もあります。
このドリルによって、ピッチリズムが体に刻み込まれ、無意識に適切な回転数で走れるようになります。
結果的に疲労や本人が意識しすぎることなく、自然な走りが維持しやすくなるでしょう。
ランニングピッチ計算と練習のコツ
自分のランニングピッチを把握するのは、練習効果を高める第一歩です。
スマホのストップウォッチやスポーツウォッチで、左右どちらかの足の接地回数を15から30秒間数え、それを2倍または4倍するだけで簡単に計算できます。
また、フォーム改善に役立つのが「速度=ピッチ×ストライド」の公式です。
これを意識すると、ピッチだけでなくストライドとのバランスが見えるようになります。
速度が落ちず、フォームが乱れない範囲でピッチを調整できるのが理想です。
練習時にはドリル形式が有効です。
たとえば、easyランの最後にピッチ重視のストライドを取り入れたり、しばらくピッチに集中するインターバルを加えたりすると自然に習慣化しやすくなります 。
さらに、短いジョグ中に「その場ジョグドリル」を挟むことで、体幹と脚の連動がスムーズになり、ピッチが安定しやすくなります。
最後に、大切なのは一気に上げるのではなく、徐々に5から10SPMずつ段階的に目標に近づけることです。
これにより、歩幅やフォームを崩さずに、持続可能なピッチ改善が可能になります。
【まとめ】ランニングピッチについて
最後に本記事で重要なポイントをまとめます。