インソール2枚重ねは、靴のフィットを手早く整えたい人に選ばれやすい方法です。
100均のアイテムで試す人もいれば、サッカーやランニング、スノボなど競技ごとに最適解を探す人もいます。
メーカーの種類ではニューバランスを例に、ニューバランスでインソールと元の中敷きをどう併用するかという疑問も多く見受けられます。
安全靴や登山靴のように用途が明確な靴では、重ね敷きタイプとは何か、どの場面で有効かを理解しておく必要があります。
さらに、厚みの出し過ぎによる3枚重ねのリスクや、元の中敷きを残すべきか迷うケース、インソールを2枚重ねた場合、どのような効果があるのでしょうか?という素朴な疑問、そしてハーフインソールのデメリットは?という実務的な視点まで、判断材料は少なくありません。
本記事では、競技や靴種別の検討ポイントを踏まえ、快適性と安全性のバランスを保つための考え方を体系的に解説します。
■本記事のポイント
- 2枚重ねの仕組みと向き不向きが分かる
- 競技や靴種別の具体的な注意点を把握できる
- 失敗しやすい厚み選びや3枚重ねの判断基準が分かる
- 元の中敷きやハーフタイプの使い分けを理解できる
インソール2枚重ねは本当に効果があるのか

靴の履き心地が少し合わない、足の疲れを軽減したい?
そんな時に試したくなるのが「インソール2枚重ね」です。
SNSや口コミでは“フィット感が向上した”“歩きやすくなった”という声も多く見られますが、実際のところ、重ねることでどんな変化が起こるのでしょうか。
靴の設計構造や足裏の力学的な観点から見ると、その効果には明確なメリットとリスクが存在します。
ここからは、重ね敷きタイプの特徴や2枚重ねの効果、ハーフインソールの注意点、さらには3枚重ねの限界までを徹底的に解説します。
重ね敷きタイプとはどんなインソールか

重ね敷きタイプのインソールは、既存の中敷きの上に追加して厚みやフィット感を微調整するために設計された補助的なインソールを指します。
特に、靴のサイズがわずかに大きい場合や、足裏のアーチサポートをより最適化したい場合に選ばれることが多いタイプです。
素材としては、発泡EVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー)、ラテックスフォーム、ポリウレタン、コルクなどが一般的で、それぞれに特徴的な機能性があります。
たとえば、EVAは軽量かつ耐久性があり、衝撃吸収性にも優れる素材として知られています。
一方、コルクは通気性に優れ、湿気を逃がしやすい性質を持つため、長時間の着用にも適しています。
厚みは1ミリから3ミリ程度の範囲で調整できる製品が多く、厚みのわずかな違いがフィット感に大きく影響することがあります。
特に、アスリートや長時間立ち仕事を行う人の場合、1ミリ単位の違いが疲労度や姿勢保持に影響を及ぼすことがあるため、慎重な選定が必要です。
靴内部の容積を考慮せずに厚みを増やすと、つま先のクリアランス(指先の空間)が減少し、血流や動きに支障が出ることもあります。
また、アーチサポートの強いインソールを重ねて使用すると、足底腱膜や中足骨への圧が過剰になる場合があるため、重ねる側のインソールはフラットに近い構造を選ぶのが安全です。
日本整形外科学会による報告でも、過度なサポート形状の重複は足裏のバランスを崩す一因になり得ると指摘されています(出典:日本整形外科学会「足部障害の予防と治療」)。
選び方の基準
●靴の容積に対して厚みが過剰にならないか
●足長・足囲の実測値に対し、つま先の余裕が確保できるか
●かかとの収まりが浅くならないか
●素材のへたり方が用途に合っているか
以上の点を踏まえたうえで、自分の足型や靴の特徴に合う重ね敷きタイプを選定することで、快適性を最大化し、長期的な疲労軽減にもつながります。
インソールを2枚重ねた場合、どのような効果があるのでしょうか?

インソールを2枚重ねる手法は、靴内部のボリュームを細かく調整し、特定部位への荷重を軽減する目的で利用されます。
足が細い、甲が低い、または靴がやや大きく感じる人にとって、即座にフィット感を改善できる簡便な方法です。
靴内で足が動く「遊び」を抑えることで、歩行時や運動時の摩擦を減らし、靴擦れの防止にも役立ちます。
インソールを2枚重ねることで得られる主な効果には、以下のようなものがあります。
1 クッション性の向上
衝撃吸収材を追加することで、踵着地時の負担を減らし、膝や腰への衝撃伝達を抑制できます。
スポーツ科学の研究でも、適度なクッション層の追加が関節への負担を軽減する効果があると報告されています(出典:国立スポーツ科学センター「運動時の衝撃吸収に関する研究」)。
2 足裏圧力の分散
長時間の立位や歩行において、2枚重ねによって接地面積が増すことで、圧力集中を防ぎ、足裏全体に荷重を分散させる効果があります。
特に偏平足やハイアーチの人では、適切な層構造によって足底の安定性を高められるとされています。
3 靴内のサイズ調整
市販靴は製造誤差や足型差により、同じサイズでも履き心地が異なることがあります。
2枚重ねを用いることで、細かなサイズ感を調整できるため、既製靴の快適性を向上させる補助策としても有効です。
しかし、メリットだけではありません。
インソールを2枚重ねることで厚みが増し、つま先の空間(トゥボックス)や屈曲点の位置が変わる場合があります。
これにより、足指が自由に動かなくなったり、歩行時の蹴り出しが不自然になるなど、疲労や痛みの原因となるリスクも存在します。
靴の屈曲点と足の関節(中足指節関節)が一致しないと、特に前足部への負担が蓄積しやすくなります。
体感を左右するポイント
●厚みの合計値と屈曲点の一致
●かかとカップの深さと保持力のバランス
●アーチサポートの重複による圧迫リスク
インソールを2枚重ねる際には、必ず「最小限の厚み」から試すことが推奨されます。
メーカーも、多くの場合で過度な厚みの追加は設計上想定されていないため、フィット不良や靴の寿命短縮につながる可能性があると注意を促しています。
これらを踏まえると、2枚重ねはあくまで微調整のための手段であり、根本的な靴選びの代替ではないと理解することが大切です。
ハーフインソールのデメリットは?

ハーフインソールは、前足部や土踏まず部分など特定のエリアを補強する目的で設計された部分タイプのインソールです。
つま先や踵まで覆うフルレングスタイプに比べて軽量で、装着・取り外しが簡単な点が魅力です。
しかし、快適性と引き換えに、構造上のいくつかの弱点が存在します。
まず、最も顕著なデメリットは「段差の発生」です。
ハーフインソールは靴内で部分的に厚みが追加されるため、踵から前足部にかけての高低差が変化します。
特に前足部だけ厚みを持たせた場合、足裏全体のバランスが崩れ、荷重の偏りが生じやすくなります。
この状態が長時間続くと、足底腱膜炎や中足骨頭痛といったトラブルの一因になることがあります。
日本足の外科学会の資料でも、足底の不均一な支持は慢性的な疲労や痛みを引き起こす可能性があると指摘されています(出典:日本足の外科学会「足底障害の臨床指針」)。
次に、粘着タイプのハーフインソールでは「位置ズレ」のリスクがあります。
粘着力が弱い、または靴底の素材との相性が悪い場合、歩行中に少しずつずれていき、最終的には摩擦や擦れの原因となります。
これにより、マメや皮膚の擦過傷が発生することも少なくありません。
特に、ランニングや立ち仕事のように長時間の使用を想定する場合、こうしたズレが疲労を増幅させる結果につながります。
さらに、部分的なサポートによる「荷重分散の途切れ」も課題です。
全長タイプのインソールでは、足裏全体で衝撃を受け止める構造になっていますが、ハーフインソールではサポートされる範囲が限定されるため、特定の部位に圧力が集中しやすくなります。
メーカーの技術資料でも、部分サポートは軽量化には有効である一方、長距離歩行や高強度の運動には不向きであることが明記されています。
最後に、サイズ選定の難しさもデメリットとして挙げられます。
ハーフインソールは靴の中で動きやすいため、ミリ単位でカット調整を行わなければ最適な位置を維持できません。
少しのズレでも足裏の感触が大きく変わるため、試着段階で位置を確認することが重要です。
これらのことから、ハーフインソールは「短時間使用」「一時的な高さ調整」には適していますが、「長時間歩行」「激しい運動」「登山などの負荷が高い環境」では慎重な運用が求められます。
元の中敷きを残すべきか取り外すべきか

元の中敷きを残すか外すかという判断は、靴の構造・用途・使用者の足型によって最適解が異なります。
基本的には、靴の設計意図を尊重し、純正の中敷きを残したまま薄手の追加インソールを重ねる方法が安全で一般的です。
なぜなら、多くの靴メーカーは中敷きを含めた状態でクッション性・屈曲点・かかとの深さを設計しており、取り外すとバランスが崩れるおそれがあるためです。
一方で、純正インソールが厚く、甲圧(甲部分への圧迫)が強い場合や、靴の内部空間が極端に狭い場合は、元の中敷きを外すことで圧迫を軽減できるケースもあります。
ただし、取り外した結果、靴底の縫い目や段差が直接足裏に触れると、摩擦による不快感や痛みを招くことがあります。
そのため、メーカーが「純正インソールを外す前提」で設計していない靴では、追加インソールを薄くする方向で調整するのが無難です。
判断の目安
●甲の圧迫が強いなら純正を外し薄手に置換
●かかと抜けが気になるなら純正を残し薄手を追加
●つま先の余裕がギリギリなら総厚みを増やさない
また、ニューバランスやアシックスなどの主要メーカーでは、公式に「純正インソールを残したまま使用できる薄型タイプ」を販売しており、追加による高さ変化を最小限に抑えられる設計が採用されています。
こうした製品を活用すれば、靴の構造を損なわずに快適性を高めることが可能です。
最終的に大切なのは「圧迫と余裕のバランス」です。
足が靴の中で安定しており、かかとが浮かず、指先に適度な遊びが確保できる状態が理想的です。
履いて数時間経過しても違和感が出ないかを確認することで、自分に合った構成を判断できます。
3枚重ねにするとどうなるのか

インソールを3枚重ねる行為は、理論上はさらなるフィット調整を狙ったものですが、実際には過剰な厚みが生じることでデメリットが大きくなります。
靴内空間が極端に狭くなり、足指の可動域が制限されることで、歩行時の蹴り出し動作が不自然になり、疲労が蓄積しやすくなる傾向があります。
また、屈曲点がずれて靴底が正しい位置で曲がらなくなり、結果として靴自体の寿命を縮める場合もあります。
多くのスポーツメーカーの公式資料でも、3枚重ねの使用は非推奨とされています。
たとえば、アディダスジャパンの技術ガイドでは、設計想定を超えるインソール追加はクッション層の変形や安定性の低下を招くと明記されています。
さらに、足の健康面から見てもリスクがあります。
過度な厚みは足底筋膜の伸縮を妨げ、足首や膝への衝撃を吸収しにくくするため、疲労骨折や炎症の一因となることがあります。
整形外科分野では「靴内空間の適正確保」がフィッティングの基礎条件とされており、3枚重ねはそれを逸脱する使用方法と位置付けられています。
| 構成 | 快適性の傾向 | リスクの傾向 | 使いどころの目安 |
|---|---|---|---|
| 1枚(純正のみ) | 設計通りで安定 | フィット不足が残ること | 基本運用 |
| 2枚(純正+薄手) | 微調整に有効 | 圧迫と屈曲ズレに注意 | 改善を狙う場面 |
| 3枚(重ね追加) | 過剰になりやすい | 圧迫・ズレ・疲労増 | 原則避ける判断 |
以上の点から、3枚重ねは例外的な場面を除き避けるべき構成といえます。
2枚までの組み合わせで段階的に調整し、履き心地を確認しながら最適なバランスを探ることが、靴と足の健康を守る最も現実的な方法です。
インソール2枚重ねを活用するシーンと注意点

インソール2枚重ねは、単なる“履き心地の調整”にとどまらず、競技や用途ごとに異なるフィット感・安定性・衝撃吸収を引き出すための実践的なテクニックです。
ランニングやサッカーなどのスポーツではパフォーマンスの安定化を、スノーボードや登山靴では足のホールド性と快適性を補強する目的で活用されています。
また、ニューバランスなどのブランドシューズや100均アイテムを使った調整法にも、それぞれ独自のコツとリスクがあります。
ここからは、具体的なシーン別に2枚重ねをどう取り入れ、どんな点に注意すべきかを詳しく見ていきましょう。
ランニングでのインソール2枚重ねの活用法

ランニングにおけるインソール 2枚重ねの目的は、着地時の衝撃を緩和しながら、足の安定性を高めることにあります。
走行中、1歩あたりの着地衝撃は体重の約2.5から3倍に達すると言われており(出典:日本陸上競技連盟「ランニングフォーム研究報告」)、長距離を走るランナーほど足裏への負担は蓄積します。
これを軽減するために、純正インソールの上に薄手の補助インソールを1枚追加することで、クッション層を増やしつつ足のブレを最小限に抑える調整法が有効です。
ただし、2枚重ねの厚みが過剰になると、靴内部の屈曲点が足の関節(中足指節関節)とずれてしまい、走行効率が下がります。
そのため、厚さ2から3mm程度の薄手タイプを選び、前足部の自然な屈曲を妨げないことがポイントです。
メーカー各社のテストデータでも、厚みが5mmを超えると屈曲点のズレが顕著になる傾向が報告されています。
また、アーチサポートの形状も重要です。
特にアーチサポートが強すぎるインソールを重ねると、足底筋膜への圧迫が増大し、長距離走では足底筋膜炎のリスクを高めるおそれがあります。
そのため、追加インソールには「フラット構造」または「低アーチサポートタイプ」を選ぶのが安全です。
ランニングフォームによっても最適な構成は異なります。
●ヒールストライク(かかと着地) の場合:衝撃吸収性を重視し、踵側の厚みをやや強化。
●ミッドフット(中足部着地) の場合:全体バランスを意識して均一な厚みを維持。
●フォアフット(前足部着地) の場合:前方への蹴り出しを支える薄型で高反発タイプを選定。
また、走行中の足の膨張(むくみ)にも配慮が必要です。
人の足は運動中に平均2から3%膨張するため、昼間や夕方の試着で圧迫感を確認すると、実走時の違和感を軽減できます。
これらの要素を踏まえ、ランニングでの2枚重ねは「衝撃緩和+安定性の微調整」という目的で用いることが理想です。
サッカーでのインソール2枚重ねの影響

サッカーにおいてインソールを2枚重ねる手法は、スパイク内部での「足の遊び」を減らすために検討されるケースが多く見られます。
切り返し、加速、ストップといった激しい動作の繰り返しでは、靴内でのわずかなズレがプレー精度に直結します。
そのため、インソールを追加して密着性を高めることは、一見合理的な選択のように思えます。
しかし、スパイクは他の競技用シューズに比べて「底が薄く」「屈曲点がシビア」に設計されています。
これは、地面との接地感とボールタッチ感を最大化するためです。
そのため、インソールを重ねて厚みを増すと、足裏感覚が鈍化し、ドリブルやパスの際のコントロール性が低下するリスクが生じます。
特に、前足部の感覚変化はボールの回転や蹴り出し角度に影響するため、プロチームのトレーナーガイドでも、過度なクッション追加は「操作性を損なう要因」として明確に注意喚起されています。
スタッド(スパイクの突起)の形状にも影響が及びます。
芝用のFG(ファームグラウンド)や人工芝用のAG、土用のHGでは接地圧が異なるため、2枚重ねで厚みを加えると重心の位置が微妙に変化し、滑りやすくなることがあります。
この変化は1から2mm程度でも無視できず、特に人工芝では滑走距離が伸び、安定性を損ねることが確認されています。
さらに、スパイクはもともと足首や踵の固定を強く意識したタイトフィット設計であるため、内部スペースの余裕がほとんどありません。
そこにインソールを重ねると、甲部の圧迫や血流制限が起こるおそれもあります。
長時間プレーや試合終盤で足が膨張すると、圧迫による足趾のしびれや爪下出血が発生するケースもあるため、実戦での使用前に十分な試験が必要です。
このように、サッカーでのインソール2枚重ねは、操作性の低下と疲労リスクを伴う繊細な調整法です。
もし実施する場合は、薄手(1から2mm)の補助インソールを用い、トレーニングでフィット感を確認してから試合に導入するのが現実的です。
また、インソールの重ね順も重要で、必ず「純正インソールを下、補助材を上」に配置し、靴底のグリップ性を損なわないようにする必要があります。
要するに、サッカーにおけるインソール2枚重ねは、足の安定性を微調整する手段として限定的に使うべきであり、常用的な使用法としては慎重に判断することが求められます。
スノボで快適さを高めるインソール使用法

スノーボードのブーツは、保温材やライナーの厚みにより着用後のフィット感が変化しやすく、シーズンを通して内部の「へたり」が生じるのが一般的です。
インソールを2枚重ねる方法は、こうした経年変化により生じた遊びを解消し、ホールド感を取り戻すための有効な調整手段として活用できます。
特に、踵の浮きや甲の浮きを補正する目的で導入するケースが多く見られます。
スノボ用ブーツは、滑走時に前傾姿勢をとる設計のため、インソールを追加する際には、足首の可動性を損なわない薄さのものを選ぶことが重要です。
ブーツメーカー各社(Burton、K2、Salomonなど)は、公式に「3mm以下の薄型補助インソールであれば前傾性能に影響を与えない」としています。
これ以上厚いものを使用すると、ブーツ内部で足の位置が高くなりすぎ、足首の支点がずれるため、ターン時のエッジ操作に遅れが出る可能性があります。
また、素材にも注意が必要です。
低温環境下ではEVA素材が硬化し、弾性が低下するため、長時間滑走時には足裏の圧力集中が増す傾向があります。
これを防ぐには、熱可塑性素材(TPUフォーム)や高反発ウレタン素材など、低温下でも柔軟性を保つタイプのインソールを選ぶとよいでしょう。
実践のポイント
●かかとカップの深さを損ねない薄さを選ぶ
●甲圧が出る場合は甲パッドと合わせて調整
●低温環境で硬化する素材は長時間使用を想定して確認
これらの点を踏まえると、スノボでの2枚重ねは、快適性を高めるうえで有効な補助策になります。
ただし、滑走前の短時間だけでなく、休憩後の再着用時にも圧迫感が出ないかをチェックすることが大切です。
冷えや浮腫による足のサイズ変化を想定し、実際のゲレンデ環境に近い状態で試すことで、より安全かつ快適なフィット感を得られます。
登山靴や安全靴でのインソール 2枚重ねの注意点

登山靴や安全靴は、通常のスニーカーやビジネスシューズと異なり「高荷重・長時間・高安定性」を前提に設計されています。
そのため、インソールを2枚重ねる際には、単なる履き心地の調整では済まない、構造的なリスク管理が必要になります。
まず登山靴の場合、長時間の登り下りによって足がむくみ、靴内の圧迫が増す傾向があります。
これは血流やリンパの循環が低下することで起こり、特に下山時にはつま先方向に荷重が集中しやすくなります。
その状態でインソールを2枚重ねて厚みを増すと、前足部のスペースが狭まり、血行を阻害して指先のしびれや爪下出血を招くことがあります。
日本登山医学会の報告でも、足趾圧迫による障害は「不適切なインソール調整」が一因となるケースが多いとされています。
また、登山靴の中底は剛性を高めて足首のねじれを防止する構造になっており、そこに柔らかいインソールを重ねると、靴全体の剛性バランスが崩れる場合があります。
インソール追加は「かかとの沈み込み」や「アーチサポートの位置ズレ」を引き起こす可能性があるため、登山用では特に慎重な検証が必要です。
一方、安全靴では、つま先保護キャップ(スチールまたは樹脂製)が内部に固定されており、内部クリアランスがミリ単位で設計されています。
JIS規格(T8101)では、足趾とキャップ間の最低空間は約12mmと定められていますが、インソールを2枚重ねると、この余裕が5から7mm程度に減少することがあります。
これにより、長時間の立ち作業で指先が前方に押し付けられ、爪障害(爪下血腫や変形)のリスクが増すことが懸念されます。
確認すべきチェック項目
・つま先の縦方向余裕と横幅の逃げ
・かかとの抜け防止と踵骨の収まり
・ソックス厚との総合厚みバランス
これらのチェックポイントを総合的に確認することが、安全性を維持したまま快適性を高める鍵となります。
とりわけ登山靴や安全靴では「厚み最小・安定最大」という考え方が基本であり、クッション性を追求しすぎると逆にパフォーマンスを損なう可能性があります。
したがって、使用環境に合わせた最小限の厚みで調整を行うことが、最も現実的で信頼性の高いアプローチといえるでしょう。
ニューバランスでインソールと元の中敷きを併用するコツ

ニューバランスはラスト(木型)の種類が非常に豊富で、「SL-1」「SL-2」「VL-1」など、モデルによって足入れ感が大きく異なります。
そのため、同じサイズ表記でもフィット感に差が生じやすく、インソールを2枚重ねることで微妙な調整を行うユーザーも少なくありません。
ニューバランスでインソールと元の中敷きを併用する際は、まず純正インソールの形状を活かすことが基本です。
純正の立ち上がり部分(ヒールカップ)やアーチ位置は、靴全体の剛性バランスを前提に設計されています。
その上に薄手のフラットインソールを追加することで、前足部の遊びを抑え、足の安定感を高める効果が期待できます。
ブランドのフィッティングガイドでも「かかとホールドの確保」と「屈曲点の一致」が快適性の要とされており、これを崩さない範囲での調整が理想とされています。
もし甲の圧迫感が強い場合は、純正インソールを外すのではなく、追加側をより薄い素材(約1mm前後)に変更して全体の高さを抑える方法が推奨されます。
また、ニューバランスのモデルによっては、同じサイズでもウィズ(幅)展開が「2E」「4E」など複数あり、サイズ選びそのものを見直すことで問題が解決することもあります。
2枚重ねに頼りすぎる前に、まずはウィズの再確認を行うことで、より自然なフィット感を得られる可能性があります。
さらに、インソールの材質にも注目すべきです。
ニューバランス純正のOrtholite素材は、通気性と反発弾性を両立した多孔構造フォームであり、追加インソールにはこれを阻害しない軽量EVA素材や低反発ウレタンが適しています。
異素材同士を重ねる場合は、摩擦や沈み込みのバランスを確認し、動的安定性を確保することがポイントです。
このように、ニューバランスでの2枚重ねは「設計の補助」として慎重に行うべき工程であり、単なる厚み調整ではなく、靴の構造を尊重した微調整として扱うことが理想です。
100均インソールを使った2枚重ねの注意点

100均インソールは価格面で手軽に試せる反面、素材や厚みの品質にはばらつきがあります。
特に発泡EVA素材や低密度ウレタンを使用した製品では、使用開始から数時間から数日で圧縮が進み、初期のクッション性能が失われる傾向が確認されています。
これにより、当初のフィット感が再現できず、左右のバランスが崩れることがあります。
製品パッケージにも、用途が「軽作業」「短時間歩行」など限定されているものが多く、長距離移動や競技用途には不向きです。
日本工業規格(JIS S5037)でも、一般用途と業務用途の靴用資材には耐圧縮性や反発弾性の基準が異なると定められています。
そのため、100均インソールはあくまで一時的な調整や簡易テスト用としての利用が現実的です。
使用する場合は、まず最薄タイプ(約1から2mm)を選び、厚みを段階的に調整します。
カットラインを左右で正確に合わせることで、歩行時の傾きを防止できます。
特に、足長差がある場合や靴底が非対称な構造を持つ場合には、わずかな誤差でも違和感が増すため、慎重なカット作業が求められます。
また、粘着固定のないタイプは、靴内でのズレが生じやすく、摩擦増による靴擦れやマメの原因になります。
これを防ぐには、滑り止め付きソックスや固定用テープを併用する方法が有効です。
さらに、通気性のない素材を使用すると湿気がこもりやすく、悪臭や細菌繁殖の原因にもなるため、定期的な交換を心がけることが大切です。
100均インソールはコストを抑えつつ試行錯誤を行うには便利ですが、長時間の使用やスポーツ、登山などの高負荷環境では、品質・耐久性の観点から専門メーカーの製品を選ぶことが安全面でも推奨されます。
【まとめ】インソール2枚重ねについて
最後に本記事で重要なポイントをまとめます。

